
軽貨物の点呼や記録を怠ると、安全管理者の選任・届出と同じように、罰金になるのでしょうか。結論から言うと、点呼や記録の不備そのものに、罰金の定めはありません。対象になりうるのは、車の使用停止といった行政処分です。ここでいう記録は、点呼・業務記録・事故の記録を指します。
本記事は、2026年11月時点の国土交通省の条文集(令和8年6月1日更新)と、国土交通省の報道発表にもとづく内容。内容は変わることがあるため、最新の案内は国土交通省や運輸支局でも確かめてください。最後まで読めば、記録の不備で何が起こりうるかと、処分につながる記録の義務が分かります。
もくじ
01軽貨物の記録の不備に、罰金の定めはない
貨物自動車運送事業法の罰則の条(第75条)は、十四号まであります。条文集を読んだかぎり、点呼や記録の不備を挙げる号は見当たりません。
順に見ていきましょう。
点呼・業務記録・事故の記録の不備に、罰金の定めはない
点呼をしなかった。記録を書き忘れた。そうした不備だけでは、罰金にはなりません。ただし、罰金がないからといって、何も起きないわけではない。国は、行政処分という別の方法を取れます。処分の中身は、次の章で説明します。
罰金があるのは、安全管理者の選任・届出など限られた場面
安全管理者の選任・届出に関わる罰金は、次の2つ。
- 安全管理者を選任しない(第75条六号)
- 安全管理者の選任・解任の届出をしない、または虚偽の届出をする(第75条七号)
金額は、いずれも100万円以下です。ほかにも、事業の届出(黒ナンバーの開業の届出)をしないで事業を行う場合なども、第75条の対象。罰金の対象は、選任・届出だけではありません。くわしくは、安全管理者の罰則の記事にまとめました。
関連記事貨物軽自動車安全管理者の罰則:選任しないと罰金?対象と期限を整理›安全管理者の講習と選任届の手順は、次の記事で確かめられます。
関連記事貨物軽自動車安全管理者の講習:申し込みから修了までの流れ›関連記事貨物軽自動車安全管理者の選任届の出し方:書く項目と届出先を整理›02記録の不備で対象になりうるのは、罰金ではなく使用停止といった行政処分
記録や点呼の義務を守らなかったとき、国が取れる手段は、行政処分。
ひとつずつ確かめましょう。
事業者が法律や命令に違反すると、国は使用停止や事業の停止を命じることができる
根拠は、貨物自動車運送事業法の第33条です。事業者が法律や、法律に基づく命令、処分に違反したとき、国土交通大臣は、自動車の使用停止を命じることができます。事業の全部または一部の停止を命じることもできる。期間は、6か月以内で決める決まり。軽貨物にも、第36条第2項で当てはまります。
点呼や記録の義務は、国土交通省の省令(貨物自動車運送事業輸送安全規則)が定めています。省令も命令にあたるため、義務を守っていないと、第33条の処分の対象になりえる。処分を受けると、使用停止の間は、車を事業に使えません。
処分の命令に従わないと、別の罰則の対象になる
使用停止や事業停止の命令に違反したときは、第71条一号が適用されます。記録の不備そのものに罰金はなくても、命令に従わなければ、1年以下の拘禁刑や150万円以下の罰金の対象。拘禁刑は、身体を拘束する刑です。記録の不備と、命令への違反は、別の話です。
点呼・記録ごとの停止の日数は、国の通達と発表に載っていない
行政処分の基準を定めた国の通達は、貨物軽自動車運送事業者にも当てはまる。ただ、違反ごとの日数は、別に定める基準によるとされており、通達の本文には数字がありません。国の発表にも、点呼や記録ごとの日数は載っていませんでした。確かめられた範囲では、日数は分かりません。
処分の具体的な内容は、管轄の運輸支局に確かめてください。
03罰金ではなく処分につながる記録の義務:点呼は1年、業務記録は1年、事故は3年保存
記録は、紙でも、パソコンやスマホでもかまいません。義務と保存期間は、3つに分かれます。
- 点呼は、業務の前と後に行い、記録を1年保存する
- 業務記録は、四輪以上の軽自動車を使う事業者が、1年保存する
- 事故の記録は、3年保存する
順に見ていきます。
点呼は、業務の前と後に行い、記録を1年保存する
点呼は、業務の前と後に行う。アルコール検知器で、酒気帯びの有無を確認する決まり。記録は1年間保存します(輸送安全規則 第7条)。一人で事業をしている場合は、自ら確認する形。検知器や日常点検を自分で確かめ、運行してよいかを自分で決めます。
関連記事軽貨物の点呼は一人でも義務?業務の前後にやることと記録の残し方›業務記録は、四輪以上の軽自動車を使う事業者が、1年保存する
業務記録は、業務を行った運転者ごとに記録します。保存は1年間(同規則 第8条)。対象は、軽貨物のうち、四輪以上の軽自動車で貨物を運ぶ事業者です。
事故の記録は、3年保存する
事故が起きたときは、内容を記録して、3年間保存します(同規則 第9条の2)。点呼や業務記録より、保存が長い点に注意してください。重大な事故は国への報告も必要で、報告は記録とは別の義務です。
関連記事軽貨物の法改正2025:一人でも何が変わったのかを整理›04点呼の不備で使用停止が通知された実例:国土交通省が発表した1,862営業所
実際に使用停止が通知された例を、国土交通省の報道発表(令和8年2月10日)から紹介します。
順に見ていきましょう。
点呼が適切でなかったとして、第33条の自動車の使用停止が通知された
発表の対象は、国が発表した、ある貨物軽自動車運送事業者です。国土交通省の監査で、点呼が適切に行われていない事案が確認され、第33条にもとづく自動車の使用停止が通知されました。通知を受けた営業所は1,862。通知を行った期間は、令和7年(2025年)10月1日から令和8年(2026年)2月10日までです。
発表の時点で、867の営業所は、停止の期間が終わっていた。
発表に載っているのは営業所の数で、台数や日数は載っていない
停止された車の台数も、停止の日数も、発表には書かれていません。実例から言えるのは、点呼が適切でないという理由で、使用停止の処分が実際に通知されている、という点だけ。個人の事業者に同じ処分が出た例は、確認できませんでした。
05記録の不備を避けるために、記録を残して出せる形にしておく
Doreco は、LINEで使える点呼・業務記録のサービスです。記録を残して、あとから出せる形にしておく備えとして、使える機能を紹介する。
順に見ていきましょう。
業務の前後の点呼を、1画面ずつで記録する
朝は、出発前チェックの1画面で、業務前の点呼を記録します。夜は、業務終了の1画面で、業務後の点呼を記録する形。記録が終わると、当日の業務記録がそろいます。
直した履歴が残り、当日の記録は夜に封印される
記録を直すと、直した履歴が残ります。当日の記録は、夜に「封印」される仕組み。
元請や荷主に、期間を選んで監査パックとして出せる
記録は、1日分をPDFで出せる。期間を選んでまとめる「監査パック」もある。元請や荷主に記録を見せる場面で使えます。処分の有無は、記録だけで決まるわけではありません。記録を整えておく助けとして紹介しました。
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06軽貨物の記録の不備は罰金ではなく処分?よくある質問
最後に、よくある疑問に答えます。
順に答えます。
点呼をしなかったら、罰金ではなく何になりますか?
点呼をしなかったことそのものに、罰金の定めはありません。条文集を読んだかぎりの答えです。
点呼は義務なので、怠ると、使用停止といった行政処分の対象になりえます。
記録を書き忘れた日があると、処分されますか?
書き忘れた日があるだけで処分される、とは条文に書かれていません。処分になるかどうかは、国の判断です。
基準の細かい点は確かめられませんでした。気になるときは、運輸支局に確かめてください。
一人で事業をしていても、処分の対象になりますか?
第33条は、届出をした貨物軽自動車運送事業者に向けた条文です。
一人で事業をしている場合も、届出をしていれば、事業者にあたります。ただし、個人の事業者に処分が出た例は、確認できていません。
処分を受けたら、どうなりますか?
使用停止の処分を受けると、期間中は車を事業に使えません。期間は、6か月以内で定められます。
日数は、国の資料から分からなかったため、書けません。処分を受けたときは、運輸支局の案内に従ってください。
軽貨物の記録の不備は罰金ではなく、行政処分の対象
- 点呼・業務記録・事故の記録の不備に、罰金の定めはない。罰金があるのは、安全管理者の選任・届出など限られた場面
- 記録の不備は、第33条の使用停止や事業停止の対象になりうる。命令に従わないと、別の罰則がある
- 点呼と業務記録は1年、事故の記録は3年、保存する
軽貨物の記録の不備は、罰金ではなく、使用停止といった行政処分の話です。使用停止の間は、車を事業に使えません。
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